Utopia

二章:少女の話

「ここは、私が生きていた時代とは違うようだから…昔のことから話すわね」

「80年前、光の氾濫という大きな事件が起きて…世界の殆どが壊れて、夜が失われてしまった」

「そしてあふれた罪喰い、という魔物に人々は脅かされてきたの」

「私が育った小さな村も、何度も被害にあっていて…幼いころに両親が亡くなって、おじいちゃんがただ一人の家族だった」

「けれど、そのおじいちゃんも亡くなって…」

「一人で過ごしていた日々の中で、ある噂を聞いた」

「近くの街、ユールモアに新たな元首が罪喰いを従わせる力を持っている」

「そして、誰も飢えることも苦しむこともない楽園を築こうとしている、と」

「最初は信じていなかった。けれど、遠くから見える街が日に日に眩しく見えて…耐え切れずに、家を後にしてしまったの」


「街にたどり着いたものの、そこには誰もが入れるわけじゃなかった」

「ユールモアに住めるのは昔からの名家とそれに望まれた労働者だけ」

「けれど、私の場合はすぐに入ることができた。それが良かったのかはわからないけれど」

「壊れた古い家具を直してほしいという人がいて…私はおじいちゃんの手伝いをしていたから、すぐに手をあげたわ」

「そうしてユールモアに入って…そこからの生活は、噂に聞いていた通りだった」

「市民は財産を街に寄与していて、誰をうらやむこともない生活。魔物に怯えることなく、平和な日々が流れる」

「何よりも、私を望んだ名家のおばさまがとても優しくて…しばらくは、まるで本当の家族のように暮らしてた」

「けれど、そんな日々も長く続かなかった」

「ユールモアではね、役目を終えた人は元首の手により『天に運ばれる』と言われていたの」

「それがどういう意味かわからなかったけど…おばさまが病気になって、近いうちに元首の下へ行くように勧められた」

「もう会えなくなる、ということはわかっていたから最後の日はお別れ会をした。そして、後は側近の人たちに任せたのだけど」

「気になった私は、隠れて後をつけて…そこは、いつもは封鎖されていた下層の部屋だった」

「そうして…見てしまった、おばさまが魔物に変えられているところを」


「結局、元首が魔物の味方だった…それが楽園の理由」

「隠れていたところを見つかって、海に捨てられて…次に会ったのが、あなただった」

「…今も後悔しているの。私はどうして何も気づかずに…村を出てしまったのだろうと」

「…キミにとって辛い話を、してくれてありがとう」

「ごめんね、きっとわからない部分もあったわよね」

「いくばくかは…けれど、キミが難しい選択を重ねてきたことはわかる」

「信じてもらうのは難しいかもしれないけれど…ワタシには魂の色というものが視えてね。その人の性格、生き方というのはなんとなくわかるんだ」

「キミの魂は、傷だらけの透明な石のようだった。けれど、その傷が光を集めていて…ワタシはそれが、とても綺麗だと思ったんだ」