Utopia

一幕:アーモロート

深海。何者かの視点で、ローブの巨人に囲まれている。ローブの巨人は何か話している。

「おや…」

「幼い子だ…ご家族と離れてしまったのかな」

「心当たりのあるものは?」

「…そうだ、人民管理局に聞きに行くのはどうだろうか」

「ふむ…そうか…」

巨人が近づき、手をかざす。

「おいで」

その時、朗らかな声で巨人が振り返る。

「やあやあ」

巨人たちが道をあけた先に、一人の別の巨人が立っている。

「お話していたところ、ごめんね…その子には心当たりがあるんだ」

「ワタシに任せてもらっても、いいかな?」


時間経過、アーモロートを見下ろす視点。

街路樹のベンチに、巨人とヒュム族の少女が並んで座っている。

「さっきはありがとう」

「どういたしまして…キミは、外から来た子であっているかな?」

「ええ、海に落ちて、気が付いたらここにいたの。えぇと、あなたは……」

「…ワタシは、ヒュトロダエウス」

「そして…ここはアーモロート。かつてこの星にあった、最も美しい都さ」


少女は何かを思い出すように俯く。

「アーモロート…」

「うん…どうしたのかい?」

「いえ…本当にあったんだなって」

「キミの世界で、ワタシたちの街が知られていたのかい?」

「ううん、遠い昔のおとぎ話なのだけど」

『街が眠りにつき、明かりが落ちるころ』

『海の中にもう一つの街が現れる』

『そこは私たち、船乗りを迎える場所』

「船大工だったおじいちゃんが良く聞かせてくれて…私はこれがとても好きだった」

「フフ、そっか…」

「ねぇ、ヒュトロダエウス。ここは…死んだ人の行きつく場所なの?」

「……」

「ごめんなさい、わかっているわ」

「海に落ちてからの記憶がないこと…そして、この手の向こうに見える明かり」

「…ここは、造られた幻影の街…そしてワタシも」

「ごめんね、キミにしてあげられることは何もないんだ。…ただ、キミが次の岸辺にたどり着くまで、そばにいることしか」

「ただ、もしも話すことが何かの慰めになるのなら、いつでも呼んでおくれ。この幻影に時間は沢山あるのだから」

「…ありがとう」


少しの間。

「ねぇヒュトロダエウス、ユールモアという街を知ってる?」

「…いいや、キミの住んでいたところかな?」

「そっか、じゃあ…」

「少し長いけれど、聞いてほしいの。私がここに来た理由を」